あーとん
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NHKの「日曜美術館」の
2019年3月3日の放送で
「知られざる絵師小原古邨」が
紹介されました。
実はこの特集は
昨年10月のアンコール放送なのです。
何が人気の秘密だったのか、
一緒に探って行きましょう。
小原古邨(おはらこそん)はどんな人?
まずは小原古邨の
プロフィールを見てみましょう。
生誕名:小原又雄
生年月日:1877年(明治10年)2月9日
死没:1945年(昭和20年)1月4日
生活:金沢→東京
国籍:日本
教育:鈴木華邨
著名な実績:板画、日本画
運動・動向:新板画
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びーさん
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さて、小原古邨(おはらこそん)は
どんな作品を描いているのでしょうか?
写実表現の美しさ
小原古邨(おはらこそん)の
作品の特徴は、
「写実表現の美しさ」です。
『蓮に雀』
色鮮やかな蓮(はす)に
雀(すずめ)が一羽、留まった様子です。
雀が留まったことで蓮の葉が揺れ、
蓮の葉に溜まっていた水が
滑り落ちています。
揺れる蓮と小首を傾げて
華を覗く雀。
蓮の匂いや
雀の立てる小さな音まで聞こえるような
繊細な作品です。
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明治の木版画は江戸とどう違う?
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明治時代に入ると、
新しい木板画が
どんどん登場します。
江戸時代から人気のある
花鳥画も、題材は同じでも
新しい手法が取り入れられ、
いままでと違う表現が生まれます。
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『雪の柳に烏』
①正面摺り(しょうめんずり)
黒一色に見えるカラスの羽に
「正面摺り(しょうめんずり)」
と言う技法が使われています。
使いたい色を摺(す)った後に
摺りあがった色面につけたい
文様などを彫った「正面板」
を用意します。
「正面板」に、
和紙のツルツルした面(おもて面)を
上にして乗せて
バレンで摺(す)ると
彫ってある模様が浮きだして、
艶となって出てくる技法です。
木の葉などに紙を乗せて
色鉛筆でこする
「フロッタージュ」に
似ているかもしれません。
こちらが「フロッタージュ」です。
こちらが、「正面摺り」を
施した作品です。
見る角度によって一部の羽の艶が出て、
濃淡が違って見えます。
1色に見える黒も、実は
工夫が隠れているのですね。
こちらが、羽の部分に
ライトを当てた様子です。
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②きめ出し
今度は雪の積もった枝に注目しましょう。
そばに近寄って見ると
雪が積もっているところが、
少し膨らんでいます。
凹凸を出したいところを
深く掘ることで、
裏返した和紙を押し付けて
凹ませます。
こうして立体感を出しています。
これが「きめ出し」です。
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明治時代の木版画の特徴
こちらは、
先ほどのカラスの木版画と同じ、
小原古邨の前期の作品です。
『鵞鳥』
『鷹と温め鳥』
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キラキラする雲母(石)の粉末を
絵具に入れて摺するきら摺り、
おぼろげな表現をするあてなしぼかし
(水を先に版木に塗り、色を濃くしたいところに
絵具を載せるぼかす)などが見られます。
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『月夜の烏』
『雪中群鷺』
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過去の作品に比べ、
色がとても
鮮やかになっていることに
気づけます。
この時代になると
欧米から合成顔料が
輸入されるようになり、
日本にはなかった色が
使用されるようになります。
また、明治時代に
新しく輸入された絵画(洋画)の
常識であった遠近法なども取り入れ、
生き物を効果的に見える
方法を編み出したのです。
とはいえ、
小原古邨は葛飾北斎や
歌川広重に比べると
無名の版画作家です。
しかし、海外では
とても人気で有名だというのです。
日本で無名なのに海外では画集発売!?
海外で売れている自分の絵に
意識を向けた小原古邨は
積極的に新しいものを取り入れて、
日本古来の花鳥画に
新しい風を吹き込みました。
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海外で有名になる転機は
フェノロサとの出会いでした。
フェロノサって誰?
アーネスト・フランシスコ・フェノロサ
(Ernest Francisco Fenollosa)
1853年2月18日 – 1908年9月21日
アメリカ合衆国の東洋美術史家・哲学者。
明治時代に来日。
日本美術を評価し、紹介に努めたことで知られる。
明治政府の招待で日本に来た
フェノロサは、
日本美術学校を作った一人です。
日本ならではの素晴らしい美を
欧米に紹介することに
使命を感じていました。
1978年のパリ万博で
空前の日本ブームが起こる中、
彼は小原古邨に
海外向けの絵を描くように依頼しました。
これが想像以上に人気となったのです。
オークションでも
引っ張りだことなり、
絵を描くスピードが
間に合わないようになった小原古邨は
板画制作を始めることにしました。
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木版画でたくさんの作品を
作ることができるようになった
小原古邨。
以後、明治・大正と
新しい版画を制作し続け、
日本よりも海外で
有名な絵師となりました。
まとめ
今回は、「日曜美術館」で
紹介される小原古邨について
学んでいきました。
版画家・小原古邨
- とても繊細な作品を描く
- 繊細だけど実は木版画
- 江戸時代から発展している技法を多様
- 明治時代からは色が鮮やかになる
- 海外では大人気で有名!
- 実物でないと分からない工夫がたくさん!
数年前には、偶然にも
数百枚も版木が見つかり、
昨年から大規模な回顧展もされ、
魅力を見直されている
小原古邨の木版画。
太田記念美術館では
古邨の展覧会を実施中です。
http://www.ukiyoe-ota-muse.jp/exhibition/ohara-koson
後期 3月1日(金)~24日(日)
住所:東京都渋谷区神宮前1-10-10
開館時間:10:00~17:30(入館は16:00まで)
休館日:毎週月曜日(祝日の場合は翌平日)、
展示替え次期、年末年始
問い合わせ:03-5777-8600
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